「なんでずっと夕方なの?」さよならを教えて 考察

このページについてと注意点

このページはゲーム「さよならを教えて」について明言されていない箇所や謎に包まれている部分について考察するページです。

ネタバレを含む内容になっているため見たくない方はブラウザバックをお願いします

 

 

主人公の病気について

管理人は一応精神科の看護師であるので、その知識と経験もふまえて考察します。

 

このゲームのエピローグで主人公は精神病を患っていて入院中ということが明らかにされました。

主な症状としては、妄想、幻覚です。

悪夢に悩まされている描写もあるため睡眠障害もあるように見えます。

 

妄想、幻覚が出現する精神病は「統合失調症」と呼ばれる病気に該当します。

主な症状は上記の幻覚、妄想が特徴的でこれらの症状は陽性症状とも言われたりします。

 

エピローグにおいて、各場所において主人公が交流していた女生徒達は全てが人ではないことが分かりました。(約一名を除いて)

(烏、猫、人体模型、人形)

これらの物を女の子としてみたて妄想の世界にいたことがこのゲームの中でも名言されており、精神症状として表れています。

 

 

何故のこの病気になったのか?

統合失調症であることを前提に話をしていきます。

結論から言うと、ストレスによって発症したものと考えられます

 

統合失調症のはっきりとした原因は今も尚分かっていません。

しかし、発症する原因として考えられているのは主に「家族性」と「ストレス」です。

家族性」については、統合失調症という病気が遺伝するのではなく、家族内にその病気を患っている人がいることや、その病気を抱えた人の子供は発症しやすいという傾向があることが分かっています。(必ず発症するわけではありません。)

 

「ストレス」については人生の転機に差し掛かった時(受験、引っ越し、就職、結婚等)や

強いストレスにさらされた経験があることや、慢性的にストレスを感じていることで発症しやすいという傾向があることが分かっています。

 

主人公の場合、両親は死去しており、姉のみが家族として存在します。

主人公を除く家族は精神病を患ったという描写がありません(見落としてるかもしれませんが)

よって発症原因の家族性については否定できるかなと思います。

 

では、ストレスが発症原因と考える場合

主人公を含め、となえ(保険医)や姉の発言では主人公が強いストレスにさらさていたことが分かります。

両親はともに教師で姉も教師として仕事をしています。

家族のみんなが教師という中で主人公も教師を志すも大学受験に失敗してしまいます。

これが主人公の中で大きなコンプレックスとなり、彼の抱える最大のストレスの原因のひとつと考えられます。

しかしこのストレスはきっかけであって主人公が感じた最初のストレスではないと思いました。

 

物語のエピローグで主人公の姉がこのような発言をします↓

姉「子供って残酷じゃない?虫を〇したり。
  そういうのがね、ちょっと・・・度が過ぎるというか・・・」
となえ「思春期になっても?」
姉「そうなの・・結構大きくなってもそういうところがあって。
  猫を〇したり。正直・・我が弟ながら気味悪くて・・・」

主人公の異常性は子供の頃からみられていたようです。

小動物を虐〇する子供の背景として、怒りや不満、不安を抱えておりそれを解消しようとしている場合や精神疾患の派生で虐〇をしてしまうなどがあります。

玉川大学 教職大学院コラムから参照)

 

主人公の家庭は勉強などは厳しい家庭だったようで、主人公の姉も真面目なキャラです。

主人公の性格もとなえは生真面目で融通が利かない性格であると感じています。

小さい頃から「厳格」である家庭にストレスを感じていたのか、はたまた彼の抱えるサディズムであるのかは不明なところであるが、何かしらのストレスを子供の頃から感じていたと推測できます。

また思春期において、姉に対して興味が出てきたのか、姉が風呂に入っているところを覗いたり、下着を盗んでしまうという行動に出ていたことも明らかになります。

またこのことに対して家族中で叱られたこともあったようです。

 

彼の「真面目いること」と「性の欲求」に対するジレンマがあったのか、うまく自分の気持ちや欲求への対処が上手に出来ていなかったことが示唆されています。

また家族に自分の「恥」が晒されたことは自尊心を傷つけられたと感じることや家族の信用を失ってしまうというような不安を感じることになってしまった経験であるとも考えられます。

 

つまり、主人公は子供の頃から思春期を通じてからも何かしらのストレスを感じており、大学受験の失敗を機に病気を発症してしまったのではないかと考えました。

 

 

 

常に夕方である理由

このゲームは始めてからクリアするまでゲームの時間帯は常に夕方になっています

主人公を視点として、一日の流れは

夢を見る(悪夢)保険医と話す女生徒と交流日誌を書いて教育担当に提出

の流れになっていますが、保険医と話す時点から夕方です。

 

これについて2つ考察があります。

 

第一の考察

この夕方の時間帯は主人公の精神状態を表している

結論から言うと主人公の精神状態が「まともな状態」と「まともでない状態」の狭間の状態にいることを朝でもなく、夜でもない中間である「夕方」を用いて表現しているではないかと考えました。

 

「まとも」な状態があったということについて

このゲームのエンディング手前でとなえ(保険医)と姉が話すシーンで、

「しかもね、彼女(巣鴨睦月)・・退院前に彼と話したんだって。
その時、全然おかしくなかったって・・お互いに励ましあって別れたんだってさ。
いい人だから、頑張ってって・・伝えてくださいって」

↓巣鴨睦月

 

主人公の病気についてのところでも書きましたが、

各場所において主人公が交流していた女生徒達は全てが人ではないことが分かりました。

しかし巣鴨睦月だけは現実に存在する少女で、うつ病を患った患者として入院していました。

 

主人公の精神状態は一日を通して常におかしい様子ではなく、特定の相手、時間帯(後述)によっては「まとも」な状態もあったような描写がされています。

 

「まともではない」状態のことについて

ゲーム序盤から主人公の精神状態は徐々に狂っていき、言動にまとまりがなくなっていきます。

最終日にはチャイムの音がノイズ混じりになり、学校のグラウンドには謎のマークが浮かび上がっています。

これも主人公の精神状態がより混沌としていっていることを示唆している描写だと思います。

 

このことから主人公の精神状態は「まとも」と「まともでない」状態を行き来しているような不安定な状態であることが分かるため上記の結論に達しました。

 

第二の考察

夕方から症状が悪化し主人公の特異性の表現をするため

具体的に言うと、姉が来る時間が近づくと主人公は不調になるということ、またそれを表現することがこのゲームの最大のテーマであることです

 

まず「姉が来る時間が近づくと主人公が不調になること」について説明します。

エピローグでとなえは姉に対してこんなことを言います↓

「つまり・・あンたが毎日来てたのは・・その・・彼にとってマイナスだったかもしれない・・」

季節は夏で学校は夏休み中であることも明かされますが、仕事終わりに来ているような発言も聞かれます。

姉は主人公へ会いに毎日面会に来ていました。

主人公が教育担当(姉)に日誌として提出していたのは、「日誌」という名の彼の「日記」です。

しかしその内容は妄想的で、姉は彼が彼の妄想の世界の学校で数人の女生徒と交流していることをそこから感じていました。

 

ここから考察なのですが、

個人的に主人公の最大のストレスの原因のもうひとつは「姉の存在である」と考えています。

先程も書いたように主人公は姉絡みでいろんな経験をしてきました。

それらをふまえ、きっと主人公の性格的に姉と自分を比較し劣等感を抱いていた気持ちもあったと思います。

両親と同じ教職に就き真面目でしっかりものな姉

大学受験に失敗し心を病んで入院している自分

劣等感を感じるには分かりやすい対比であると思います。

 

また主人公は現実の認識も少なからずあると思うととなえは発言しています。

しかし現実を直視するには耐えられる心がないのか、劣等感や羞恥心などきっと彼の中にはいろんな感情が渦巻きそれが大きなストレスとなって彼の心を蝕んでいると推測できます。

 

つまり姉の存在は主人公に「現実」を突き付ける存在。

主人公の心という器に対して大きすぎる容積を持ったものであると考えます。

しかし主人公には「現実」を直視する能力は今は持ち合わせていないため、

自分は教育実習生で、姉を「姉」ではなく「教育担当」として認識することでなんとか精神を維持しようとしていたんだと思います。

しかし主人公にとって「現実」(姉)が毎日来ることは不安、焦り、恐怖、羞恥心、劣等感などいろんな感情を巻き起こす要因になっていた。

 

なのでとなえは、姉に対して「毎日面会来てたのは、マイナスでだったかもしれない」と発したんだと思います。

 

よって姉が来る時間が近づくと主人公は不調になると考えました。

 

 

次に「主人公の特異性を表現することがこのゲームの最大のテーマであること」についてです

まずこのゲームは精神病をシミュレーションするためのゲームとして作られたようです

このゲームの制作にあたって、著明な精神病院を取材し、重度の統合失調患者の言動などを観察することでよりリアリティを高めていることに努めていました。

アダルトゲームとしてカテゴライズされているが、実際は対象年齢を想定していないシミュレーションゲームで売り出す予定だったようです。

しかし人間の三大欲求(食欲、睡眠欲、性欲)のうち性欲以外はコンピューターゲームで表現することが難しかったことなどから、成人指定にせざるを得なかったようです。

(アンサイクロペディア参照)

 

つまりこのゲームは精神に変調がある人の気持ちや考え、行動などを追体験するような目的で作られたことになります。

その中で主人公が徐々におかしくなっていく様子を表現しそれを伝えることが、このゲームの肝であり見せ所ということです。

そして主人公が最も言動がおかしくなっていくのは、先程書いたとおり「姉が来る」時間です。

姉は夕方に来るので、この時間帯が選ばれたのだと思います。

 

終わりに

この考察以外にもネットにはいろんな観点から独自の考察をしている方がいます。

YouTubeにも考察している動画あるので見てみると面白いです。

ストーリーはそこまで難解なものではないと思いますが、名言されていない描写がいろいろあるため「これはなんだろう」と感じる場面はいろいろありました。

古い作品であるにも関わらず現代にも通じるような混沌として斬新なストーリーである今作は間違いなく名作の一つでしょう。

 

一応注意書きですが「統合失調症」=「おかしい人」という訳ではありません。

症状が強い人は対応が難しくなる場合もあり入院を余儀なくされることもありますが、

闘病しながら仕事をしたり、日常生活を送ってる方も大勢いらっしゃいます。

統合失調症以外にも精神病は誰でも発症する可能性がある病気です。

ですのでそのことだけでも覚えてこのページを離れてください。

 

今作か別の作品かはわかりませんが、またこのような考察を執筆すると思います。

ではまた。

 

さよならを教えて ~comment te dire adieu~

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